戸澤の週報

2021年06月06日

半導体の現状

当社が属する半導体の業界は現在未だかつて経験したことがない状況になっています。

幅広い半導体メーカーが供給難となっています。

顧客サイドでも、大手を含むほとんどの会社で入手難となっています。

半導体の供給難はさほど珍しい事ではありません。

およそ3年サイクルで半導体の好不況の波が訪れますので、大体3年に一回は半導体の入手が困難になります。

今までは新聞やテレビなどの一般の方の広く目に触れるところに情報が載ることはほとんどありませんでした。

新聞やニュースで連日報道されていますので、今回の件はそれくらいインパクトがあるということです。

 

今回の半導体の入手難に至った経緯をまとめてみたいと思います。

2017年と2018年は半導体のスーパーサイクルと言われ、活況を呈していました。

AIやIoTなどの新しいテクノロジーと、クラウドを支えるデータセンターの存在が大きかったと思います。

2019年には米中貿易摩擦が激しくなり、一気に需要が冷え込みます。

特に中国国内での設備投資が大きく失速し、全世界の半導体需要に大きな影響を与えました。

未だに米中貿易摩擦は何も解消していませんが、大きな変化としては「常態化」したということです。

この米中に摩擦があることを前提で世界経済が回り始めたということです。

2019年の12月くらいから、半導体需要の回復のシグナルが見え始めてきました。

2020年の2月くらいにははっきりと回復が見えてきたのですが、そこで起こったのがコロナです。

2020年3月には多くの半導体・電子部品の工場は各国の政府より稼働を制限されたため、サプライチェーンの寸断が各所に発生しました。

この時は半導体の不足が起きましたが、世界の半導体に対する需要は一旦冷や水をかけられた形となります。

問題はここです。

一旦、半導体の需要が上がっていくかに見えて、一気に下がってしまったために、半導体各社は大きくブレーキを踏んでしまいました。

自社で工場を持っている会社では、ウェハーの投入を大きく減らしました。

自社で工場を持っていない、ファンドリーに製造を委託している会社は、向こう数か月分の自社の生産枠の多くを放棄してしまったのです。

その後中国では、世界に先駆けてコロナから回復し、経済が通常化してきました。

他の国でも長期に渡るコロナの影響から、今後の常態化が既定路線になり、経済活動の再開を強めてきました。

これらの状況は2020年8月くらいから見え始め、年末にははっきりとした形で現れてきました。

このあたりから、車向けの半導体の不足がニュースに出始めてきました。

そこに輪をかけて、2021年2月には米国テキサス州の大寒波が、半導体メーカーに大きな影響を与えました。

2021年3月にはルネサスの火災も続き、半導体の入手は混迷を極めていきます。

5月を終わっても非常に高い水準で半導体の入手難が継続しています。

 

半導体の特徴は、生産を増やすと決めたとしても、そこから実際に生産量が増えてくるのには時間が掛かることです。

半導体の製造はほぼ自動化されていますので、既に生産性が高い状態です。

例え生産ラインを増やすスペースが現在あるとしても、製造装置のリードタイムは、今の現状では早くて半年、1年かかっても不思議ではありません。

そして、半導体の製造装置はカスタムの調整が入りますので、そこでも時間が掛かります。

自動化するには搬送装置が必要になります。

テスターも必要になります。

多くの設備が必要で、それらが一つでも欠けても、効率の良い生産ラインを作ることはできません。

ここ最近、半導体各社は生産量の増加をアナウンスしています。

これらはあくまで生産量を増やそうと意思決定したことを外部に公表しているにすぎません。

ここから実際には①スペースの確保(場合によっては用地確保から)②ラインの設計③製造装置や各種装置の発注④人員の確保・トレーニング⑤入荷した製造装置のチューニング

⑥新たに組んだ生産ラインの試運転・歩留まりチェック⑦実際の量産

と言うように長い工程があります。

新聞に載るのはあくまで⓪増産の意思決定 が掲載されるだけで、⑦にたどり着いたことは公表されません。

さらに量産にたどり着いてからも、半導体の製造工程における納期は約6か月です。

そのように考えると、今の需要がこのまま続くとしたら、2022年の夏くらいまではこの状況が続く可能性があります。

もちろん、需要が下がることはありますし、現在の需要は既に各社が物確保のために発注量を実際のオーダー数より増やしていますので、実需ではありません。

しかしながら、世界中でワクチンが浸透し始めてきて、これから経済活動が本格的に再開されることを考えると、大きく需要が下がることは考えづらいかと思います。

 

しばらくは全く予断が許されない状況が続くことになると思います。

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