戸澤の週報
2026年09月05日
無常観から学ぶもの
月日は百代(はくたい)の過客(かかく)にて、行きかふ年も又旅人也。
松尾芭蕉の『奥の細道』は、この有名な一文から始まります。
月日は永遠の旅人であり、やってきては去っていく年もやはり旅人であるという意味です。
ここから、世の中のものはずっと同じ姿ではいられない。
人も、場所も、時代も変わっていく。
その無常を前提として、それでも今この瞬間を生き、旅を続けていく、という感覚を伝えているのだと思います。
奥の細道全体を通して感じられる無常観は、私たちの人生のはかなさと同時に、今この瞬間を生きることの大切さを教えてくれます。
時間の流れを止めることはできません。しかし、その時々に全力で考え、行動することはできます。
会社で考えた場合、どんなにうまく行っている事業もいつかは陳腐化していきます。
時間が経てばそこで働いている人も入れ替わるでしょう。
そのような無常を当たり前のこととして捉え、必要に応じて変化をしていくことが大切です。
時代に合わせて捨てるものがある一方で、どれだけ時間が流れても、守っていくものも必要になります。
会社にとって大切なものを守ることは、強大な無常の力に向き合うための、数少ない武器に思えます。
「夏草や兵どもが夢の跡」
奥の細道に収められている、無常観を強く表す名句です。
岩手の平泉は奥州藤原氏が栄えた土地で、源義経にもゆかりがあります。
かつては大きな勢力を持ち、多くの人が夢や野望を抱いた場所でした。
しかし芭蕉が訪れたとき、その栄華はすでになく、目の前にあるのはただ夏草が生い茂る風景でした。
ひとつのものがその力を保ったままでその場にい続けることは本当に難しいものです。
会社は、飛び続ける飛行機を操縦することに似ています。
少しの判断ミスなら修正できます。しかし、間違った方向へ進んでいることに気づかず、修正を怠れば、いつか飛び続けることができなくなる。
気を抜いてもいけない。驕ってもいけない。何より、変化に気づかなくてはいけない。
無常観とは、人と組織が生き残るために持つべき知恵であると言えそうです。
無常を知っているからこそ、何を変え、何を変えないかを決めることができる。
どれほど繁栄した企業も、その繁栄そのものを永遠に残すことはできない。
だから残すべきは、現在の成功ではなく、次の成功を生み出せる思想と仕組みなのではないかと思う。
変えてはいけないものを守るために、変わり続ける。








