戸澤の週報
2025年06月07日
自助論:天は自ら助くる者を助く──150年前の真理が、今なお響く理由
日中は夏を感じさせる気候となってきました。
これからの真夏を考えると、怖いくらいですね。
どうしようもないことなのではありますが、何とかならないかと思います。
先週の学問のすすめに続きまして、今回紹介するのは、サミュエル・スマイルズ著『自助論』(竹内均訳/三笠書房)です。
この本の書かれている代表的なフレーズは「天は自ら助くる者を助く」は、誰もが一度は聞いたことがあると思います。
なぜこの本かというと、自助論は学問のすすめとほぼ同時期に日本で広く流行していたベストセラーだったからです。
当時は中村正直が「西国立志編」として翻訳し、日本に紹介しました。
偶然ではありますが、福沢諭吉が説いた学問のすすめも、サミュエル・スマイルズが説いた自助論も共通しているのは自己努力・自立の重要性です。
明治の初期の頃に2人の偉人が国を別として同じことを主張しているとは非常に興味深いですね。
西国立志編が出版されたのは1871年ですので、今から150年以上前の話です。
当時の日本とイギリスとで同じような課題があったということでしょう。
自助論は実に多くの過去の偉人たちのエピソードを取り上げた本です。
第2章の「忍耐」では幸運について記載があります。
努力していない人ほど自分の不運を主張するが、幸運の女神の目はそれほど節穴ではないと言います。
どんなことを追求するにも、常識や集中力、勤勉、忍耐のような平凡な資質が一番役に立つ。
たとえ天才と言われる人でも、世間的な常識や辛抱強さを兼ね備えていると言います。
ある人は“天才とは忍耐なり”と語り、また別の人は“忍耐力こそが天才である”とまで言っています。
ニュートンは研究中のテーマを目の前に広げてじっと見ていると、闇の中に一条の光が差し込み、夜が明けるように、問題の本質がくっきりと姿を現すのだといいます。
これらの内容が、これでもかというくらいに例を挙げて、我々に努力を迫ってくるのが、この自助論という本です。
先週の学問のすすめの所でも書いたように、学ばなければ道は開けないという、非常に厳しいスタンスがここでも同じように繰り返されてきます。
やはり、これは本質なのだと思います。
自分で学ぶこと。
努力すること。
うまく行かなくても忍耐すること。
私はこの週報を土曜日の朝に近くのサンマルクカフェで書いていることが多いのですが、周りに目をやると勉強している大人がかなりいます。
本を読んでいたり、ChatGPTと思われる生成AIを使って色々と調べ物をしていたりします。
人前では見えないものの、裏で努力している人はしているものです。
読書、学び、努力、忍耐などは現代に表立って言われなくなってしまった言葉たちです。
しかし、これらを避けて、仕事の課題に対して適切な解決策を出すことはできません。
ニュートンの言うところの闇から一条の光が差してくるような、思考の深さを生む集中力を獲得することはできないはずです。
人が驚くほどの日々の積み重ねが、問題を解決し、新たなものを創造するための、源泉のようなものを創り出すと理解しました。
人は概して必要な努力の量を甘く見積もりがちです。
この本が背中を押してくれるきっかけになれば幸いです。