戸澤の週報

2026年07月25日

池袋の先人たち

当社は西武ホールディングスグループが保有するビルに本社を構えています。

先日、長い改装を終えた西武池袋本店も営業を再開しました。

毎日見慣れたこの街は、日本の流通と鉄道経営を変えた経営者たちが築いた街でもあります。

そこで今回は、その礎を築いた堤親子について触れてみたいと思います。

 

創業者である堤康次郎は、明治22年に滋賀県で生まれています。

東京帝国大学(現在の東大)卒業後、衆議院議員などを経て1920年ころから鉄道事業や不動産事業を始めます。

康次郎は鉄道事業を最終目的としませんでした。

鉄道会社ではなく、「街そのもの」を経営しようと考えた人物でした。

沿線の住宅開発、ホテルを建て、観光地を開発し、鉄道と沿線開発の一体ビジネスを先駆けて実行しました。

その流れの中で発展したのが、後の西武百貨店です。

 

康次郎の死後、大きくなった西武グループは2人の息子に引き継がれました。

兄である清二は西武百貨店、西友、クレジット会社、不動産会社を引き継ぎました。

弟である義明は西武鉄道、プリンスホテル、ゴルフ、スキー場、リゾートなどを引き継ぎました。

 

二人とも強力なリーダシップを持った事業家でしたが、清二の活動は通常の経営者とは一線を画しています。

経営者であり、作家・詩人の辻井喬(つじいたかし)でもありました。

事業を引き継いでからの清二は、パルコ、ロフト、無印良品、ファミリーマート、リブロ(本)、WAVE(CD)、セゾン美術館などを作り、一大勢力であるセゾングループとなりました。

文化発信を強く意識した経営は当時の広告などに色濃く伺うことができます。

文化を経営に持ち込んだ先駆者である一方、積極的な事業拡大と不動産投資がバブル崩壊後に重荷となり、グループ全体の大きな痛手を負い、清二は表舞台から姿を消すことになります。

義明は鉄道・ホテル・リゾートを世界有数の規模へ育てた一方で、ガバナンス上の問題により2004年に経営の第一線を退きました。

西武百貨店はその後セブン&アイグループの傘下に入りましたが、百貨店業界を取り巻く環境の変化などもあり、2023年に米国投資ファンドへ売却されました。

 

歴史にIFはないとは言いますが、もし清二率いるセゾングループに適切な財務の規律、財務力があったなら、全く違った展開になっていたはずです。

それぞれの会社は別資本になってしまいましたが、今も個性的で競争力を持っている会社が残っているのが何よりの財産です。

私の中でセゾングループはマーケティングの先生であり、過剰な多角化の戒めや、財務の力の必要性を強く感じるモデルケースとなっています。

色々なことがありましたが、この二人の兄弟は池袋の街を大きく方向づけ、その価値を上げたことは間違いありません。

優れた戦略だけでは企業は永続しない。

文化と財務、挑戦と規律。

その両立こそが、企業を未来へつなぎ、次の世代へ価値を受け継ぐ力になるのだと、池袋の二人の先人は教えてくれています。



 
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